職人interview
#27


京繍|01|絶対に「美しい」こと

京繍の魅力は 絶対に“美しい“こと。
京繍の職人さんは百種類もの技法を使い分け、一万色以上ある絹糸を組み合わせ、「日本の色」を作ります。藍色と言っても、 青藍、縹色、瓶覗。少しの色の違いで名前や由来がそれぞれにあります。何千年も続く日本の色を扱い、作り上げるのはとても難しいこと。
しかし、それを調和してくれる不思議な優しさが絹布と絹糸にはあります。そんな道具ひとつ取っても魅力が溢れている京繍についてお話ししてくださいました。

絶対に「美しい」こと

──刺繍には沢山種類がありますが、京繍の特徴は何ですか?

日本の“刺繍“っていっぱいありますけどね、北の方はどこにあるのかわからないけど、南の方は長崎もあるし、広島にもある。だけど、国の経済産業省が指定する伝統工芸に指定されているのは京都と加賀だけです。京繍と加賀繍の違いは、ほとんどないんです。刺繍はもともと中国から渡ってきたけど、なんとなく違うんです。技法が良く似ているけど、やっぱりその土地その土地の好みが出る。柄だったり色の特徴だったり、繍い方によっても趣が違うんですよ。

──京繍の魅力とは。

絶対に「美しい」ことです。刺繍って平面にするんですけど、どこか立体的で、奥行きがある。絵画じゃ出ない魅力だと思います。

──技法はどれほどありますか?

いっぱいありますよ。100種類あるって言われています。だけど、必要とされているのは30種類くらいです。ちょっと違うだけで違う技法って言われているから、ひょっとしたら100種類以上あるかもしれないですね。

──30種類の技法を習得するには、どれくらいかかりますか?

できるようになるには3年くらいあれば充分。でもどんなご依頼がきてもできるようになるには、10年以上かかります。自分でどうするか考えてできる、あるいは職人さんに指示が出せる、これができるようになるのが大切なんです。

例えば、絞り染めの布に刺繍をするとき、ゾッとする。(笑)伸びちゃうからピンと張れへんし、裏打ち布を貼って、乗せて、仮止めをして、それで絵を描いて刺繍していく。まず糸で凹凸を潰して平らにするんですけど、そうしたらその部分だけ伸びちゃう。絞りの良さを消さへんようにする調節が大変で。そういう風に、「どうやったらできるか」を常に自分で考えられるようにならんとね。


職人interview
#27
京繍杉下
杉下陽子

文:
溝部千花(空間デザインコース)
川口水萌(ビジュアルコミュニケーションデザインコース)

京繍杉下HP:
https://www.h-sugishita.jp/

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京繍|01|絶対に「美しい」こと

京繍の魅力は 絶対に“美しい“こと。
京繍の職人さんは百種類もの技法を使い分け、一万色以上ある絹糸を組み合わせ、「日本の色」を作ります。藍色と言っても、 青藍、縹色、瓶覗。少しの色の違いで名前や由来がそれぞれにあります。何千年も続く日本の色を扱い、作り上げるのはとても難しいこと。
しかし、それを調和してくれる不思議な優しさが絹布と絹糸にはあります。そんな道具ひとつ取っても魅力が溢れている京繍についてお話ししてくださいました。