職人interview
#20


茶筒|02|マニュアルのない、開化堂の“らしさ”

日本で一番古い歴史を持つ、創業144年 『開化堂』 6代目 八木隆裕さんのお話。茶筒の蓋を開けた瞬間の気持ち良さ。そこに開化堂の“らしさ”が詰まっています。
「この仕事は継ぐな」と言われ、継がないと決めていた隆裕さんは 一度、別の道を歩むも、あることがきっかけで開化堂を海外へ展開していきます。海外での実演販売などを重ねることで気づいた、“日本らしさ”、“開化堂らしさ”とは。そして隆裕さんの目指すスタンダードとは何か。
100年変わらず在り続ける、茶筒と手仕事の魅力についてお話ししていただきました。

マニュアルのない、開化堂の“らしさ”

──私たちは社会の最先端にあるものだけが“新しい” とは考えず、“古い” と言われているものの中にも新しさや、可能性はないかと考え『old is new』を軸に活動しています。開化堂さんは何を軸にされていますか。

蓋を開けた瞬間の気持ち良さ。ここに “らしさ” が詰まっていると思う。
マニュアルなんてない。工房にもマニュアルなんてありません。

──京都で生まれ育ち、仕事をされていますが京都をどう見られていますか。

文化のある街やと思います。
世界中から見ても京都って面白い。面白い人が住んでるし、土地が安いし、ご飯も美味しくて文化もある。いっぺん外に出て見ると、面白さが見えてくるし、なんで京都があるのか考えるようになる。

京都の古い町並みの写真をSNSにあげる人がよくいますけど、見栄えだけで京都ができているではなく、京都の人の空気感があるから今がある。地蔵盆があって、邪魔臭い付き合いがあって、今の京都があると思う。
京町家がいいと言われ始めたのはここ最近。自分は何が心地よくて次の代にどう繋ぐか、ということだけを考えてやってます。

──手づくりの良さや、面白いことはなんですか。

“手づくりやから、良いもの” とはあまり思わない。ただ、機械には “揺らぎ” というものがありません。完璧すぎる人って近づきにくい。
僕は揺らぎのあるものを作りたい。開化堂の思う “らしさ” を作れるのがこの方法(手づくり)やと信じているので、そうしているだけです。

AIが出てきてるけど、美しいとか、美味しいとか、気持ち良いとい うことは人間が決めること。AIが決めることじゃない。AI というのは、いろんなことを単純化することなんです。
僕たちがやってるのは単純化することじゃなくて、いろんな多様性をものに持たせること。人間の感じる気持ち良いというのは、みんな違うので、それを大事にしていくというのはAIでは出来ません。


24時間仕事だし、24時間オフ

──日々大切にされていることはありますか。

常に一生懸命です。手を抜くのが嫌。
それで変な結果になるとしても、どうせなら思いっきりやりたい。それが楽しい。24 時間仕事だし、24時間オフ。子どもを育てることも、開化堂の次の代のことを考えたら仕事だし、仕事も家族を養うことと考えたらオフみたいな感じ。

──これからの『開化堂』どうお考えですか。

僕が今目指しているのは世界の “スタンダード” になること。入れ物としてのワールドスタンダードになりたい。それでいて小さな会社でありたい。一番大切にやってることは、同じものをずっと作り続けること。
100年前からずっと、同じ直径、高さのものを作っています。

これから僕らがやるべきことは、100 年後もこれを作っていること。今買ってくれた人が100年後これを持ってきて、僕たちが修理するということが僕たちがやるべきこと。同じことをやりながら、伝え方を変えていったりしてこれまでと変わらず、同じことをやることが僕らのやることやと思います。

その中で「100年同じ茶筒を作り続けるためにはどうしたら良いのか」っていう事を常に考え続けています。
なのでコーヒーの缶であったり、パスタの缶を作ったり、楽しいなぁと思ってもらえることを。
木に例えると、枝の先が綺麗だとたくさんの人に見てもらえる。そしてだんだん幹の部分に注目してもらい、茶筒を知ってもらう。これが僕たちのやるべきことやと思います。


職人interview
#20
開化堂
八木隆裕

文:
溝辺千花(空間デザインコース)

開化堂HP:
https://www.kaikado.jp/

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茶筒|02|マニュアルのない、開化堂の“らしさ”

日本で一番古い歴史を持つ、創業144年 『開化堂』 6代目 八木隆裕さんのお話。茶筒の蓋を開けた瞬間の気持ち良さ。そこに開化堂の“らしさ”が詰まっています。
「この仕事は継ぐな」と言われ、継がないと決めていた隆裕さんは 一度、別の道を歩むも、あることがきっかけで開化堂を海外へ展開していきます。海外での実演販売などを重ねることで気づいた、“日本らしさ”、“開化堂らしさ”とは。そして隆裕さんの目指すスタンダードとは何か。
100年変わらず在り続ける、茶筒と手仕事の魅力についてお話ししていただきました。