職人interview
#38


型友禅|02|“先を見越す”仕事

型友禅は、明治に入ってから化学染料がヨーロッパからきたことによって浸透した友禅染の技術の一つです。
横田さんは、友禅の世界に入る前、東京でパソコンなどデジタル系を扱う仕事をしていました。「外から入ってきたからこそ、技術を残す役目になりたい」。
そうおっしゃる横田さんから、型友禅の魅力についてお話を伺いました。

“先を見越す”仕事

──乾く前のインクがすごく黒がかっている時、色の見分けって大変ではないですか。

仕組みとしては、友禅のりっていうでんぷん質ののりに染料を加えて色のりを作るんです。それを生地に「描く」。白生地に色のりが乗るわけで、ここに蒸しをかけることで色のりが染料を生地に定着させるんです。ですけど、色のりの染料の100%は生地に定着するわけではないので。そうなると、上に乗ってるのりよりかは下に定着する色は薄くなるじゃないですか。

なので、見分け方というか、欲しいのはこっち(生地に定着した色)だから、のりがどれくらいの色味だったら、生地にはこれぐらいの色味がつくな、っていう考え方ですね。これは色づくりの職人さんの経験と勘です。この色を作るには、この染料何グラム、この染料何グラム…… って、データで計っているところもあるんですけど。温度と湿度によっても定着の具合が変わってくるので、結局は手合わせでやった方が狂いがないんです。

──同じ染料でも季節によって色が変化するってことですね。

変わると思います。同じ配合ではないだろうし、基本的に毎回手合わせなので、実際どれぐらい違うのかっていうとわからないですけど、その時に合わせて作ってもらっているので。すごいことですよね、僕もできないことはないですけど、やっぱり時間がかかっちゃう。一発で合うことはないんで、何回か試験して寄せてくんです。

──色使いや柄の抽象化によって現代でも「古い」と思われないのかな、と思いました。

色使いとかもやっぱり変わってくるんですかね。昔はもっとシックな色合いだったのが、やっぱりどんどんポップな感じになっていってます。それも時代によって変わってきますね。

振袖業界も、今は新色とか新柄の見本を作るんですけど、この見本を着るのって、再来年の成人の子なんです。すごく早いんですよね、成人式って一月でしょ。その時に着る振袖を決めるのはだいたい前年の成人式あけじゃないですか。そこに見本を揃えるのは、この時点で完成させとかなきゃならないから、もう一年前なんです。だから今年これが流行ってるとか言われてもピンとこうへん。

毎年成人式は見にいくんですけど、僕らが去年作ったものは出て来ない。自分のとこらで作ったものを見かけると結構レアなんです。今年は多かったかなあ。

──「時代に合わせる」っていうよりも「時代の先をみる」んですね。

先を見越している感じですね。
40歳とか、60歳のおっちゃんが20歳の子のデザインを先取りするんです。「これがいいのかな」って。(笑)この感性あってんのかなって思いながら。来年ぐらいから派手なのでてきますよ。

インクジェットの技術が安定して、いいものが去年ぐらいから日本界隈では出てきてるんですよね。今年でもインクジェットのすごいキラキラしたやつができてきてるんで、だいぶ変わってくると思います。ママ(お母さん)の振袖着るのも流行ってるけど、やっぱり全然違いますね、柄が少ないんです。


「変わりたくないけど新しいもの好き」

──作る上でのこだわりはなんですか。

今は伝統的な柄が多いので、伝統的な柄を残しつつ、新しい色で冒険したい、って思っています。思いっきり古典なのもあるけど、準古典でも、色使いを柔らかくしてみるとか。柄ってだいたい一緒なんですよ。桜、梅、松、鞠…… とか。

色とか配置でちょっとでも新鮮にできるように工夫はしています。型なので配色を変えれるんですよ。この配色で今年売ったら来年違う配色で見たいな風にできるんで、そういう時は逆に印象を残さないようにするんです。同じ柄だけど色で雰囲気を変えて出したりします。

──京都ってどんな街ですか?

ややこしいですよね、単純に。特に伝統関連っていうのは。京友禅も「京都」ってついてるし、今まで成功してきてる中でやってる人たちはプライドもある。伝統産業みたいに昔からの地場があるものって、ほかのものは1回廃れてるんですよ。

例えば日本酒とか、地方の産業とかは、もう少し早く危機的状況を迎えてる。どこの産業ももう虫の息だけど、何軒か残ってて頑張っていたり。日本酒なんて焼酎ブームがきたときに一時期全滅しかけた。だけど今は若い経営者が入ってきてて、やり方を変えてブームになるくらい挽回してる。

それは新しいことを色々やってるから、やらなくちゃいけない状況になったから。京都って京都っていうブランドが強かったから、今まで結構なんだかんだ生き延びてきたんじゃないかなって思うんです。それが効かなくなってきたのが今の状況で、ここで多分ある程度なくなってしまうものもあるし、そういうのを残れるようにするのは外から来た人だからできることなんじゃないかなって。それになりたいと思ってます。

切り口変えてやっていかなくちゃいけないなと思うし、京都ってそういうのにすごい抵抗するけど、受け入れもする。よそから入ってきた人を様子見するとか、嫌味とか、そういうのはありましたけど、入ってからはよくしてくれるし。「変わりたくないけど新しいもの好き」っていうイメージがありますね。やり始めた時は文句言われるけど、流れがちょと良くなると「面白いんちゃう?」って。そういうのを拾いながらやっていきたいなって思いますね。

トータル的には新しいことをやりやすい街なのかなってイメージもあります。周りの人が興味津々なんですよ。これは多分大阪、東京の人たちとは違うところ。
東京ってあんまり周りに興味ないけど、京都は昔からのコミュニティがしっかり残ってるからすごく見られるし、色々言われるけど、応援もしてくれる。


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丸染工業株式会社
横田武裕

文:
川口水萌(ビジュアルコミュニケーションデザインコース)

丸染工業株式会社HP:
http://www.marusenko.co.jp/

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型友禅|02|“先を見越す”仕事

型友禅は、明治に入ってから化学染料がヨーロッパからきたことによって浸透した友禅染の技術の一つです。
横田さんは、友禅の世界に入る前、東京でパソコンなどデジタル系を扱う仕事をしていました。「外から入ってきたからこそ、技術を残す役目になりたい」。
そうおっしゃる横田さんから、型友禅の魅力についてお話を伺いました。