職人interview
#10


和鏡|01|世界でひとりの和鏡師

世界に1人となった和鏡師山本晃久さんのお話。
三種の神器である鏡には〝今を映す〟という意味があります。技術の進歩と共に、外国からガラス鏡が日本へ普及する以前、日本人は銅鏡を研ぐことで繰り返し使っていました。山本さんに伝統工芸の見せ方や魔法の鏡、キリシタン魔鏡についてお話いただきました。

世界でひとりの和鏡師

──鏡師とは。

主に神社仏閣に納める御神鏡を作っています。作家と共同制作することもあります。

──この世界に入ったきっかけは、なんですか。

仕事として始めたのは、大学卒業してすぐです。
祖父の手伝いとして、鏡を磨くようになりました。鏡師になるには、30年かかると言われています。「鋳造」「削り」「研ぎ」の各工程の技を習得するのに10年かかるからです。

──30年、心が折れることはなかったですか。

僕自身、同じ作業を繰り返すのが嫌じゃないんですよね。
ただ小さい頃は全然興味がなく、どんな仕事なのかも詳しく知りませんでした。時代も時代なんで、僕が大学4回生の頃よりも1回生の頃の方が忙しかったなぁというのが実感できた。この業界は良くならないだろうなぁという状況だったんで、父親から「この仕事やれよ」と言われることもありませんでした。祖父は継いで欲しいと思ってたみたいですけど、直接そんな話をする事もなくて。一般の人はまず、こんな仕事がある事を知らないじゃないですか。知らない=絶対選ばれない。

──鏡師は他にいらっしゃいますか。

世界にうちだけです。
周りに銅鏡を使ってお化粧とかしている友達いないでしょ?
皆さんの日用品はガラス鏡なんですけど、昔は金属の鏡を使っていたんです。外国からガラス鏡が入って、銅鏡と違って “曇らず、軽くて安い” ということで、変わってしまった。しかし、なぜまだ日本に金属の鏡が残っているかというと、神社仏閣のご神鏡やお祭りがあるからです。日本の文化のおかげ。

──昔、日用品の鏡が曇った時はどうしていたんですか。

僕らみたいな職人が年に一度家庭をまわって、研ぎに行ってたんです。曇った鏡を綺麗にするのに削るのは0. 何ミリ。曇るたびに削るので長持ちさせるために、極力削り過ぎないように。

──魔鏡とは、どういうものですか?

魔鏡というのは、見た目は普通の鏡なんですけど、光を当てると裏面の模様が反射して出てくるんです。表に微妙な凹凸があり、それに光を当てる事で映し出す仕組みです。削っている時に凹凸が自然と出てくる。鏡を極限まで薄くすることで魔鏡現象が起きます。薄くするのに一ヶ月間削り続けます。
キリシタン魔境は二重構造になっていて、裏の模様の見た目は、当時人気で一般的だった鶴とか松竹梅の模様で、光を当てるとキリストが映るという仕組み。これをキリシタンは隠し持っていた。
その他に、いろいろな模様の魔鏡が生まれました。魔鏡がいつ発明されたかは、正確には分かっていません。三角緑神獣鏡を復元し磨いたら魔鏡現象が起きたので、かなり昔に作られたことになる。卑弥呼の時代ですね。でもそれが偶然か意図的なのかは分かりません。


職人interview
#10
山本合金製作所
山本晃久

文:
溝辺千花(空間デザインコース)

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和鏡|01|世界でひとりの和鏡師

世界に1人となった和鏡師山本晃久さんのお話。
三種の神器である鏡には〝今を映す〟という意味があります。技術の進歩と共に、外国からガラス鏡が日本へ普及する以前、日本人は銅鏡を研ぐことで繰り返し使っていました。山本さんに伝統工芸の見せ方や魔法の鏡、キリシタン魔鏡についてお話いただきました。