職人interview
#25


草履|01|「女性は草履を脱いでも綺麗なように」

人やお店で賑わう祇園・花見小路にある、創業64年の「、や(ちょぼや)」様々な色、形の草履や下駄。
舞妓さんの「おこぼ」などが店先に並んでいます。
お店の戸を開くと、現当主の櫻井 功一さんが畳の上で作業されています。
お話をしていると 近所の方が世間話をしに、外国人観光客が「これは何?」と尋ねてきたり、「鼻緒がゆるくて」と芸舞妓さんが修理にきたり、次々に来客が。櫻井さんは丁寧に、軽やかに対応されていました。祇園の舞妓さんたちに「お父さん」と慕われている櫻井さん。草履の美しさ、履き心地の秘密について教えていただきました。

「女性は草履を脱いでも綺麗なように」

──ハナオの表記には顔についている鼻の「鼻緒」とお花の「花緒」ありますが、履物の世界ではどっちなのでしょうか。

基本私らの世界では「nose」の方で書くね。
本を読んでもこれといって書いてな くて、僕的にはこれ(足を乗せる部分)が顔に見立てられてるんちゃうかなという単純な考えなんですけども。

──草履下駄はどのタイミングでこの形になったのでしょうか。

これはわからんなー。
昔のトイレの下駄には、平べったい板に親指のとこだけつまむ形のものがあった。 それは見たことあるんですよね。ただ、そうなるとここの挟む力(足の親指と人差し指の間)が強くないと脱げちゃうから、改良されたと 思うんです。ちょっと話ずれるけど、この位置(下駄の後ろの木の歯がついてる位置)も完璧な 位置やと 思うんよ。この歯がちょっとでも前についてたら歩きにくいし、後ろすぎてもこけてまうし、ベストな位置だと思う。色々調べたんやけどね、なんでここの位置になったとかは一切書いてないんです。

──謎深い…。草履ってかかとがはみ出ますよね。

下駄草履は謎深いよね。昔は足が小さい人が多かったから。で、うちは後ろの幅と前の幅を変えてる。後ろの幅は少し大きいでしょ。すると前をちょっとすぼめるだけでこれだけ細く見えるでしょ。で、これは昔流行った、“柿の種” っていう形。

──柿の種。

そうやって昔の方は言うてはりますね。

──左右はないんですか?

ないです。だから、鼻緒の先が土台の真ん中についてる。今日はこう履いて、 明日は反対に履いたりすると、綺麗に満遍なく減っていくので、片減りしないです。

──おもしろいですね。現代の履物はだいたい左右あるので新鮮です。履き方の質問ですが、女性のミュールだったら、少し靴がさい方が綺麗に見えると思うんですが、草履も同じですか?

同じやね。だからミュールは “over the heels” やろ?
足がかか とから出ても大丈夫やねんな?

──そうですね。出ます。

草履も基本、かかとは出てふつう。脱いだ時にも綺麗に見えるように。皆さん大きいの履いてて自分一人だけ小さいの履いてたら、脱いだ時もやはり綺麗に映えるし、足よりも小さめの草履を選ぶのが女性にはいいかな。まあ初代、うちのおじいさんは「女性は草履を脱いでも綺麗なように」って草履を細めに考えたんですけど。


職人interview
#25
、や(ちょぼや)
櫻井功一

文:
溝辺千花(空間デザインコース)
川口水萌(ビジュアルコミュニケーションデザインコース)

職人interview
#25


草履|01|「女性は草履を脱いでも綺麗なように」

人やお店で賑わう祇園・花見小路にある、創業64年の「、や(ちょぼや)」様々な色、形の草履や下駄。
舞妓さんの「おこぼ」などが店先に並んでいます。
お店の戸を開くと、現当主の櫻井 功一さんが畳の上で作業されています。
お話をしていると 近所の方が世間話をしに、外国人観光客が「これは何?」と尋ねてきたり、「鼻緒がゆるくて」と芸舞妓さんが修理にきたり、次々に来客が。櫻井さんは丁寧に、軽やかに対応されていました。祇園の舞妓さんたちに「お父さん」と慕われている櫻井さん。草履の美しさ、履き心地の秘密について教えていただきました。