「なんでも作れる」こと
──瓦以外で興味のある伝統工芸はありますか?
コラボしたいなあって思うのは截金(きりかね)かな。でもな、漆に負けはんねん。そやさかいに漆で金箔を貼ったらいいんやけど、漆じゃないから、水が当たるとあかんねん。やからまた他の方法を考えんとね。漆の色に金箔の色が入るのはすごくかっこいいから。
豊臣秀吉が金箔してるでしょ、一番最初は織田信長の安土城ね。やっぱり織田信長よりも豊臣秀吉のほうがすごいな。織田信長のほうが「手間がかかって目立ちにくい」。豊臣秀吉は「安くあげて目立つ」。そう言う違いがあるね。織田信長は紋様があったら紋様の底に金箔を貼って、反対に豊臣秀吉は出っ張ってるところに金箔をはんねん。そりゃ目立つわな。だから安土城の金箔の貼り方と桃山城の貼り方は違うんよ。
──昔から作業はされていたんですね。
嫌じゃなかったし、遊びでやってたからね。親父は「家を継げ」なんて言うてなかった。前の作業場では、俺をりんご箱に入れて仕事してたみたい。だんだん大きくなってからはうろうろするようになって。土を詰めるところがあってね、一段掘れてるところ。そこに水張ってあったらそこで遊んでたり。そんなことをやってたらしいわ。
──浅田さんの思う、手仕事の良さはなんですか。
「なんでも作れる」ことやね。基本を知ってないとできないでしょ。
──Old is newについて
いっぱいある。瓦が剥がれたらもう上には載せられないんです。木材が細くなってるでしょ。「やっぱり瓦の方が良かった」って思っても、もう建物自体が無理なの。瓦の重さに耐えられる木材じゃないからね。
瓦で僕が思う利点は、リサイクルできること。もうエコ製品やから。廃材にして粉砕したら他のものにも使えるし、害になるものなんもない。粉砕したら路盤材(床)になるし、インターロッキングしたら公園とか歩道にも使えるでしょ、公園なんかに撒いておけば、多高湿やから雨降ったら水を吸収するし、暑くなったら水分を発散して温度を下げる。だから、瓦を利用したらまだまだいけるし。
ガーデニングにもね、瓦の細かいのを入れておいたら水もちがいいし、水はけもいい。いい点もあんねん。水の浄化もそれでできる。
使えないのは表面の炭素の膜。これがみんな使えてないねん。それをなんとか使えないかね。可能性はいっぱいある。
食器にも使えるよ。山口県の瓦蕎麦があるでしょ、あれは普通の瓦やったら一回使ったら割れるんやで。だから瓦の粘土じゃなくて、「万古焼」。土鍋の粘土を瓦の形にやれば、何回でも焼けます。食器にも火にかけることもできる。だから考えたらなんぼでもできるよ。
職人interview
#34
浅田製瓦工場
浅田昌久
文:
溝部千花(空間デザインコース)
川口水萌(ビジュアルコミュニケーションデザインコース)
浅田製瓦工場HP:
https://www.kyogawara.com/
時代の建築方法に合わせて、重さも形も変化を遂げる瓦は、たくさんの魅力が秘められていました。手仕事の良さは「なんでも作れる」こと。そんな京瓦の魅力についてお話ししてくださいました。