イメージを決定付ける
──創業して何年ですか?
創業は1896年です。今年で123年目で、今の工房では70年くらいやってます。
──引染の特徴とは?
引染は、着物の地色、つまりイメージを決定付ける重要な仕事なんです。まずは、地入れ作業ですね。染める前に布海苔や豆汁を塗布することで、染料が均等に染まるように前処理をします。そのあとに染料を使って無地染め、ぼかし染め等の引染を行います。ですけど、地入れにムラがあると仕上がりにもムラが出る可能性があるので重要な作業になります。引染は、広い面積を染めるために湿度、温度の管理も重要になりますね。
──染める時の染料は、どれくらい必要ですか?
おおよそ、無地染めの場合で一反1.5リットルから2リットルくらい用意します。途中でなくなったらダメなので、それより少し多いくらいですね。刷毛も薄い色は毛の長いものを使ってて、濃い色は短いものを使います。
広い範囲を染める
──引染の工程全てお一人でやられているのですか。
今は色合わせ、染めなどもすべて一人でやっています。同業者で一人で染めているところも何軒かありますね。
──染料は何を使われていますか?
酸性染料を使っています。絹とウール、動物性繊維を染めるのに使っていますね。麻とか綿などの植物性繊維は反応性染料を使っています。両方とも染められる直接染料っていうのもあるんですけど、それは日光の焼けに弱かったりするんです。だからほとんど使ってないですね。
染料も単色用と濃色用があります。染料も、足しても一定のところで濃度は上がらなくなる。だから、単色用と濃色用を組み合わせて、バランスよく染料を作っています。特に引染は広い範囲を染めるから、ムラを作っちゃダメなんです。だから、友禅屋さんが使っている染料より色数が少ないんです。合わせる時にブレがないように。
──「染める」仕事の土台だからこそ、慎重にやる必要があるんですね。
そうですね。
当社の工場では染めやすい気候は年間にふた月程度しかありません。湿度とか天候によっても、染めに向いてる日、向かない日があるんです。だからこそ染めやすいように工夫をしていますね。知識量は多く持って他の職種のことを知っていないと染められないので。
──今後のものづくり、伝統工芸のありかたについて教えてください。
第二次世界大戦の後、日本人は安全保障を他国に任せて経済成長に専念してたんです。欧米に追いつけ追い越せ、と頑張ってきて先進国の仲間入りをしたんですよね。だけど、その代償として日本人の持っている伝統を犠牲にして来ました。今後の日本の発展を考えたとき、日本の伝統だったり独自の発想は世界に対して良い意味での武器になります。若い世代の人たちには日本の伝統、文化、工芸を勉強してもらって、日本の明るい未来を作っていって欲しいな、と思っています。
職人interview
#39
共和染色工業
早川茂
文:
川口水萌(ビジュアルコミュニケーションデザインコース)
共和染色工業HP:
https://hikizome.com/about/
10メートル以上もの長い生地を刷毛で染める作業は、とても魅力的で圧倒されます。
「日本の伝統工芸は世界に対して強い武器になる」そうおっしゃる早川さんから、引き染めの魅力についてお話しを伺いました。