職人interview
#53


金箔|01|ドラマティックに飛び込んだ世界でしたが…

今回お話を伺ったのは、五明金箔工芸さん。
明治初期、初代次郎吉が仏具店の番頭だった関係により、二代目治太郎が平安箔安氏の下で修行し、金箔押しの技術を得たことがはじまり。
以後、その技術を受け継ぎ、仏具から大阪城、ティファニーまで、幅広い分野で活躍しています。

ドラマティックに飛び込んだ世界でしたが…

──この世界に入られたきっかけはなんでしたか?

学生の時、夏休みなどに本当に簡単なことを時々手伝ってたんです。ある大晦日に近い頃手伝った時、作品を納めに行く時に雪が降っていた。それがものすごくドラマティックだと思って。
「この仕事ありきなんやろうな〜」と思ったんです。

──たしかに、ドラマティックで素敵ですね!

そうでしょう。それで、最終的にはこういう仕事って、時間の制約が全くないんです。自分の始めたい時間に初めて、今日はこれでいいか、という風に。早かろうが遅かろうが、仕事中心。そして何より、どれだけやってもなくならない。特に、後に後に残せることだからっていうのはやっぱりあります。あとやっぱり、仕事したらするだけ、金になる。と当時は思いました。全っ然ちゃうかったけど笑

──そうなんですね笑 学生の頃からこの世界に入っていこうと薄々考えてたんですね。

うーん、でも私、もともとこの仕事やる予定じゃなかったんですよ。テレビとかマスコミとかに進もうと思ってた。でも、どちらにも手作りっていうところが共通してるでしょ。
職人の修行っていうのは素晴らしいことだけど、これは私に背景がなかったらいいんですよ。でも見えてますやん。後ろにうちの親父やらがね。だから自分はもし職人になれなくっても自分の責任で、最短で一人前の技術をとった方が勝ちやと思ったんです。それで、外には出ないで、この道に飛び込んだ。


喧嘩してでも納得いくまで

──手仕事のメリット、デメリットはどのように考えていますか?

メリットは、全部ちがう。おんなじ物がない。ものがAだとして、三つやっても、三つとも違うんですよ。それはなんでかって漆のってる状態も違うし、彫刻されてる状態も違う。変化があって、自分が試されている感じ。
何をやっても勉強には変わりないしね。

──同じものができないから、どうなるか分からない面白さがありますね。

うん。でもそれはメリットでもありデメリットにもなりうるんですよ。何が起こるか分からない。定石ではいかない。「こないだこういうやり方だったし、今回もこうでいいだろう」って安易にやると大こけすることもあるしね。
だからうちでは新しいものをやる時は必ず、費用は頂かずにテストピースを送ってもらう。その上で、「これでいいです」って言わはったら本体にいくようにしてる。

──お互いに納得いくまでやってみるんですね。

そう。仕事っていうのは、特に初見、一番最初にやる時は、絶対喧嘩なんですよ。喧嘩すべきなんです。はじめの時にお互い言い分とか、モチベーションを必ず比較して、あたるんです。あたると、思ってたことが全部出せるので、喧嘩はあとはなくなるんですよ。一応、ある程度の膿は出しちゃってからやります。やっぱり、作品がうまくいかなかったら困りますから。信用して言っていただいて以上は、一番最初にイラッとするかもしれないけど、それはうちのモットーなので。
ご了承くださいと言って、やります。

──どんなものを求められているかしっかり話し合うんですね!

そうです。はじめのやりとりで、やりあうことは必須だと思っています。だって、もうここに預けといたら綺麗に金にしてくれる!っていうのがプロフェッショナルだから当たり前。企業さんやお客さんはそう思ってる。だからその間の、素材や漆の相性なんかはちゃんと勉強してないとダメなんです。経験値っていう面で見たら、うちの親父の時まで仏壇、仏具できてるから、そのままで行ったら新しいこと絶対できないんです。自分の中でもまれないと。素材対応はきちんとできるようにならないとと思って、いろいろするようになりました。与えてくれはったもの、要望されたものを綺麗に仕上げてなんぼのもんですから。それができないようではダメなんで。これは、仕事に対しての信念としてありますね。


職人interview
#53
五明金箔工芸

文:
則包怜音(油画コース)

インタビュー:
堀江若菜(ファッションデザインコース)
寺本昂平(ファッションデザインコース)

撮影:
中田挙太

五明金箔工芸HP:
https://www.gomei.ne.jp

職人interview
#53


金箔|01|ドラマティックに飛び込んだ世界でしたが…

今回お話を伺ったのは、五明金箔工芸さん。
明治初期、初代次郎吉が仏具店の番頭だった関係により、二代目治太郎が平安箔安氏の下で修行し、金箔押しの技術を得たことがはじまり。
以後、その技術を受け継ぎ、仏具から大阪城、ティファニーまで、幅広い分野で活躍しています。