舞妓の御用達
#01


髪結師 中村美容室

舞妓、芸妓さんの存在は知っているけどどんな生活を送っているのか、どれだけの職人さんが関わっているのか私たちにとってそれは謎に包まれたままでした。
そんな“気になる”気持ちから舞妓さんの頭の先から足の先まで徹底解剖する企画がスタート。
この記事を通して、日本に残った文化“美しい謎”を一緒に解明していきましょう。

第1回 髪結師 中村美容室 芦田加奈子さん

記念すべき第1回は頭の先、髪について。
髪結師である中村美容室の芦田加奈子さんにお話を伺いました。 また今回は特別に実際に舞妓さんが髪を結っているところを見せて頂きながらお話を聞くことが出来ました。

髪結といっても、実際に地毛を結うのは舞妓さんだけで、芸妓さんはかつらになります。

まずは髪結の名称を教えてもらいました。

黄色:前髪 青:鬢(びん) 緑:髷(まげ))赤:髱(つと)この4箇所に分けて髪を結い上げていきます。

また舞妓さんの髪結も5種類に分類されます。
髪結の種類を見分けるのに大事なポイントは髷に付けている飾りの“かのこ”と言われる部分です。

①割れしのぶ
店だしから約2年、若い舞妓さん
髷の上と下からかのこが見えている状態

②おふく
2年〜4年ほどの舞妓さん
髷の下部分のみかのこが見えている状態

③奴島田(やっこしまだ)
基本的におふくの舞妓さんが正装の時にするもの

④勝山(かつやま)
祇園祭限定

⑤先笄(さっこう)
舞妓さんを卒業し、芸妓さんになるまでの期間

髷の上から毛束を少しまとめて結い出している形で、
芸妓さんになるときにその出ている毛束を切って舞妓さんの卒業を表す

髪結の順序は
まずハサミのような電熱アイロンで髪全体に跡を付けていきます。
次に3種類のくしをつかい、前髪→髷→髱→鬢の順に髪をふんわりと持ち上げながら結っていきます。

髪結の主な道具は髪を結う時に仮止めとして和紙を柔らかくした物。硬さの違う鬢付け油。
髪ゴムの役割として和紙をろうでコーティングした元結(もっとい)という紐。
また基本的に地毛で髪を結っていきますが、毛量が足らない場合は、人毛で作られた付け毛を使います。付け毛にも名称があり(写真上から)根まき、かせ、くしさし、びんはし の4種類が使用されます。

インタビュー最後に「自分にとって舞妓さんは?」と質問すると芦田さんは「舞妓さんはお稽古に行く前に髪を結いに来るんです。髪を結ってお稽古に行く姿は自分の子供のようなものですかね。」とおっしゃっていました。実際に髪を結ってもらっている舞妓さんもとてもリラックスをして会話を交わしていたり、舞妓さんがお店を後にする際に「おおきに、行ってきます」 「いってらっしゃい」のやりとりがとても印象的でした。 髪結師は年々減っているため、現在主に舞妓さんの髪結を手がけているのは3店舗ほど。

中村美容室ではおよそ30人の髪結を手がけられています。一人一人髪質も毛量も髪を引っ張る強さも違います。
しかし、いつでも優しく迎え入れ、何も言わなくてもその人にあった髪結をする姿はまさに親子そのものなんだろうと感じました。


舞妓の御用達
#01
中村美容室
芦田加奈子

文:
中喜多真央(空間デザインコース)

イラスト:
樋田みち瑠(油画コース)

舞妓の御用達
#01


髪結師 中村美容室

舞妓、芸妓さんの存在は知っているけどどんな生活を送っているのか、どれだけの職人さんが関わっているのか私たちにとってそれは謎に包まれたままでした。
そんな“気になる”気持ちから舞妓さんの頭の先から足の先まで徹底解剖する企画がスタート。
この記事を通して、日本に残った文化“美しい謎”を一緒に解明していきましょう。