舞妓の御用達
#06


おこぼ ちょぼ屋

舞妓、芸妓さんの存在は知っているけどどんな生活を送っているのか、どれだけの職人さんが関わっているのか私たちにとってそれは謎に包まれたままでした。
そんな“気になる”気持ちから舞妓さんの頭の先から足の先まで徹底解剖する企画がスタート。
この記事を通して、日本に残った文化“美しい謎”を一緒に解明していきましょう。

第6回 おこぼ ちょぼ屋 桜井功一さん

第6回目はおこぼや草履を作っているちょぼ屋の桜井功一さんにお話を伺いました。

ちょぼ屋は創業1954年の現在3代目のお店で、初代店主は京都にいた親戚の下駄屋に25年ほど修行してからちょぼ屋というお店を作られたそう。
店名に”ヽ”が使われる理由といて、何か文字を書く時必ず”ヽ”から始まることから初心を忘れないという意味が込められている。
はじめは読み方が“てん”であることから天を連想したもののお客様に向かって天は失礼であると考え、ちょぼになったそうです。

まず、下駄とおこぼは木でできており、草履はコルクに革やビニールを張って作られています。
製造は分業になっていて、ソールを作る人→革を張る職人→挿げ師(鼻緒を取りつける職人)に分けられます。

コルクでできたソール
牛皮の見本帳

ちょぼ屋さんは最後の鼻緒を取り付ける工程をしていて、この鼻緒のつけ具合で履きやすさが決まるそう。お客さんには足のサイズ、甲の高さ、草履などが履き慣れているか3つだけ聞いて、あとは職人の勘でその人にあうように調整するそうです。

ところで舞妓さんの履いているおこぼはどのくらいの高さがあると思いますか?
3寸5分(10.5cm)が基本とされていますが、ちょぼ屋さんでは最大4寸(12cm)までのおこぼを取り扱っています。
かなり高さがありますが、これが鼻緒だけで足を支えて1人で歩く限界の高さだそうです。

また、下駄やおこぼには何も塗られていない木と、黒に塗られた2種類があり、木の方はオールシーズン、黒塗りは夏(7〜9月の半ば)までと分けられています。
この理由は、昔は道路が土であったため、足袋を履かない夏場は足が汚れるため目立足せないために黒塗りの下駄と履き分けていたそうです。

最後にちょぼ屋さんにとって舞妓さんや芸妓さんはどんな存在かお伺いすると「年齢的にお客さんとは思ってへんなあ。ほんまに娘を見てる感じ。基本的にうちは修理代とか取らへんのよ。それは花街にお世話になってるから。目に見えへんとこだけどお返ししていくんよ。」とおっしゃっていました。

桜井さんはとても気さくな方で、私もお店の前を通った時にはふらっと立ち寄ってお話をしにいくことがあります。
ちょぼ屋店内でパーティーを行うもあるそうで、そこに舞妓さんや芸妓さんが遊びに来ている写真を見せてくれたりします。
この気さくで、優しい桜井さんがいるからこそ現在も舞妓さんや芸妓さんに愛されるお店なのでしょう。


舞妓の御用達
#06
おこぼ ちょぼ屋

文:
中喜多真央(空間デザインコース)

イラスト:
樋田みち瑠(油画コース)

舞妓の御用達
#06


おこぼ ちょぼ屋

舞妓、芸妓さんの存在は知っているけどどんな生活を送っているのか、どれだけの職人さんが関わっているのか私たちにとってそれは謎に包まれたままでした。
そんな“気になる”気持ちから舞妓さんの頭の先から足の先まで徹底解剖する企画がスタート。
この記事を通して、日本に残った文化“美しい謎”を一緒に解明していきましょう。