舞妓の御用達
#03


記和装小物 井澤屋

舞妓、芸妓さんの存在は知っているけどどんな生活を送っているのか、どれだけの職人さんが関わっているのか私たちにとってそれは謎に包まれたままでした。
そんな“気になる”気持ちから舞妓さんの頭の先から足の先まで徹底解剖する企画がスタート。
この記事を通して、日本に残った文化“美しい謎”を一緒に解明していきましょう。

第3回 和装小物 井澤屋 井澤美紀子さん

第3回「舞妓の御用達」は慶応元年から和装小物を取り扱っている 井澤屋の5代目 井澤美紀子さんにお話を伺いました。

井澤屋は着物に関わる貴金属(宝石や帯留めなど)を主に販売していましたが、時代とともに変化するお客様の好みに合わせて現在では柔らかな素材を使った小物を多く販売しています。
また、お店の場所も創業当初から変わらず南座や祇園町と近いことから舞妓・芸妓さん、歌舞伎関係との関わりが深いお店でもあります。

まず、舞妓・芸妓さんとの関わりについてです。基本的に舞妓さんはお金をたくさん持っている訳ではないので自分で買い物をしません。

昭和時代までは旦那衆と呼ばれる、お茶屋さんごひいきの方達がたくさんの商品をお店に用意させ、その中から舞妓さんや芸妓さんに好きなものを選ばせていたのが一般的でした。
しかし、現在ではめっきり減ったそう。 なぜこのように変化したのか理由を聞くと “一番は粋な遊びをする人が減ったことやろなあ”とおっしゃっていました。また舞妓さんは可愛らしい、はんなり とした商品を好み、 芸妓さんはすっきりとした商品をよく好むそう。

さらに京好み、江戸好みというのも存在し、京都は色・柄が多く、江戸はシンプルで、モノトーンが多いそうです。

次に南座との関わりについてです。南座にはたくさんの歌舞伎役者が出入りをします。ただ歌舞伎役者との関わりがあるのはもちろんですが、梨園の奥様(歌舞伎役者の妻)との関わりが深いそうです。
なぜかというと歌舞伎役者には公演の際にたくさんのお部屋見舞(お祝い)が届きます。
梨園の奥様はそのお部屋見舞にお返しをするのですが、その際に南座の前と距離が近いため、お買い物に来るのが創業当初からの関わりだったそうです。

ところで、皆さんは“一見さんお断り”という言葉をご存じでしょうか。聞いたことがあっても実際どの様な仕組みか知らない人も多いと思います。
舞妓さんや芸妓さんを呼ぶと花代(置屋、お茶屋、料亭で宴席を設ける時にかかる代金)や交通費、買い物代とお金がかかりますが、このお代は月に1回お茶屋さんから旦那衆(お客さん)へ振込をお願いするそう。
昔はクレジットカードなどは存在しなかったために1ヶ月間は旦那衆との信用だけでやりくりをしていることから、顔が知れた人しかお店を使うことができない制度ができたそうです。

また“お金を払わない=また来てください”という意味合いを持つことからこのお店を使うことが一回切りにならないように。という思いも込められているそう。
さらに京都にこの文化が残っているのが多い理由として、東京や大阪でお金を使う人たちは基本的に移動が多く、1ヶ月も同じところに滞在しているかわからない可能性があります。
ですが京都で同じようにお金を使う人たちは老舗の上層部の人だったり、移動がない人たちが多かったため、一見さんお断りの文化が根強く残ったとも言われています。

最後に「井澤屋さんにとって舞妓さん、芸妓さんは?」と質問をすると「京をはじめとしたお茶屋文化に関われていることをありがたいと思っています。大切な存在ですね」とおっしゃっていました。
祇園町や南座と創業当初から関わりがあり、粋な遊びを支えてきた井澤屋さん。お話を聞かせていただいた井澤さんはどんなお客さんに対しても優しく、丁寧に受け応えをなさっていて、この姿勢そのものが粋なのではないかと感じました。


舞妓の御用達
#03
装小物 井澤屋

文:
中喜多真央(空間デザインコース)

イラスト:
樋田みち瑠(油画コース)

装小物 井澤屋HP:
https://www.izawaya.co.jp/

舞妓の御用達
#03


記和装小物 井澤屋

舞妓、芸妓さんの存在は知っているけどどんな生活を送っているのか、どれだけの職人さんが関わっているのか私たちにとってそれは謎に包まれたままでした。
そんな“気になる”気持ちから舞妓さんの頭の先から足の先まで徹底解剖する企画がスタート。
この記事を通して、日本に残った文化“美しい謎”を一緒に解明していきましょう。