食べる楽しみが深まる、特別なアイススプーンを目指して

──ICE CREAM GIFTの企画の話が来たときは、どういった印象を受けられましたか？

アイススプーンというアイテム自体を七宝でつくったことがなかったので、どうしてそのようなモチーフを選んだのかなと、きっかけが気になりました。企画自体はとても興味深く、スタッフ全員で楽しくミーティングを重ねていきましたね。

七宝のカトラリーはスプーンの柄のところに色をつけたり、ちょっとした装飾程度のものが多くカトラリー全体のデザインに七宝を組み込んだものはあまりないので、新鮮な感じがしておもしろかったです。

──スプーンを作るにあたって苦労した点などはありますか？

七宝は金属工芸なので、下地にどういった金属を使うのかというところからご相談をさせていただきました。この金属によって上に乗せた七宝の発色も変わってしまうので、完成までのイメージのすり合わせなどが少し大変でした。

──スプーンって口に入れるものなんですが、そういうところで注意してたり意識したことはありますか？

そうですね。弊社の七宝の特徴として、金属の縁を溶かして土手のように盛り上げておいてから釉薬を乗せるんですが、それによって肌に触れたときの丸みのある触感やアイススプーンがもつ見た目の柔らかさに合うような質感の表現を意識しました。

──アイススプーンをどのように使っていただきたいですか？

コンビニやスーパーで無料で配っている紙や木のスプーンと違って1点ずつ手作業でお作りしているものなので、使っていただくシーンもちょっと特別な場面かと思うんです。特別な時間を特別なアイテムとともに過ごしていただき、ちょっと食べる楽しみが深まるようなアイテムになればいいなと思っています。

──七宝のアイススプーンを実際に使用されたことってありますか？

使ったことはないですね。研究部の方から、素地が金属なので手の温度がスプーンを通して伝わって、ほどよくアイスクリームが溶けるので使いやすかったというのはお聞きしました。実際に使われた方の使用感は気になるところですね。

──お客様にものを届ける際に大切にされていることは何でしょうか？

いいものを作るというのは大前提です。手に取った瞬間だけでなく、実際に使った時も使い終わったそのあとも満足いただけるような品物であること、また、長く使い続けていただけるようにお客様との連絡体制を作ることや、万が一のお修理などアフターフォローも大切だと考えています。

七宝は経年劣化などの変色がなく世代を渡り継ぐことができる素材なので、自分の手元や大切な人に何年経っても残したくなるような品物をお届けしたいと思っています。

──ヒロミアートさんはアクセサリーを作っていらっしゃいますが、スプーンって全く違うジャンルですよね。そういった感じで、今まで他の商品企画とかをやってこられたことってあるんですか？

そうですね。社長が何でもやってみようという常に前向きな姿勢でモノづくりに臨んでいるので、電化製品のロゴマークを七宝で作って取り付けたり、お皿やぐい飲みや照明器具なども制作しました。土台の金属の形をいじればいろんなアイテムを作ることができます。そういった背景もあって、今回のアイススプーンも作ったことがなかったけれどそんなに身構えることもなくやってみたという感じですね。

商品の一部に加飾として七宝を使いたいというような注文もあります。木で作ったお皿に七宝のパーツをはめ込んだり、いろいろな展開の仕方が可能です。

──いろんな素材と相性がいいんですね。

七宝と一緒に焼くことができない素材もあるので、あとから七宝を貼り付けるという形になる場合が多いんですが、ここにこういう質感のこういう色が欲しいというオーダーに合わせてかなり柔軟に対応できるのは強みですね。

──やっぱりカラーバリエーションが多いからこそできる強みですよね。

釉薬同士を重ねることで何色でも作れるので、ご要望にお応えしやすいのではないかと思います。

About Whole Love Kyoto
#16
ヒロミ・アート

文：
原田仁乃 （基礎美術コース）

撮影：
中田挙太

Whole Love Kyoto HP｜ICE CREAM GIFT：
https://wholelovekyoto.jp/2020/08/21/ice-cream-gift-_-%e9%a4%9d%e9%87%91%e5%85%b7-%e3%82%a2%e3%82%a4%e3%82%b9%e3%82%b9%e3%83%97%e3%83%bc%e3%83%b3/