京都のスープ
#15


日の出うどん

「どこのお商売でも材料屋さんがもうみんな辞めてるところが多いねん。みんな後継ぎがないから。そんななってきてるけど、うちはカレーうどんで一応残っているんやから子供、孫、ひ孫に代々引き継げるようにしていきたいね。」
家族でお店を守り続ける日の出うどん 3代目、大隅大二郎さんにお話を伺いました。

“日の出”という名前

京都は左京区、北には哲学の道、南には南禅寺や永観堂がある真ん中に日の出うどんはあります。

日の出うどんは、最初はおまんじゅう屋さんからはじまりました。

「昔、大正時代は“日の出餅”というおまんじゅう屋さんやったんです。戦時中でお砂糖も貴重だったから、おまんじゅうとおもち1種類ずつぐらいしかなかった。その頃は観光客とかもなかったから、近所の人が甘いもん食べたいって言って並びに来たんです。」

戦後、学生さんが多く住んでいたことから食堂として再スタートし、昭和32年、本格的におうどん屋さんになられたそうです。

「“日の出”というのはおまんじゅう屋さんの屋号やったから、継いだ時ちょっと嫌だった。うどん屋やったら、うどん屋の屋号があるし。でも、“日の出”は、今ではいい名前やなって思ってるよ。」

(昔は“うどんや風一夜薬”というものがあり、風邪をひいたらあつあつのうどんと、この風邪薬を飲むと早く治ると言われていたそう。)


人に教えたくなるカレーうどん

日の出うどんの看板メニューといえばお客さんのほとんどが頼まれるという、カレーうどん。

人から人へ伝わり、このカレーうどんを求めて、お店には開店前から連日長い行列ができています。

ですが、初めからカレーうどんが名物だった訳では無かったと大隅さんは仰います。

「最初カレーうどんは、肉カレーうどん1つだけだった。タクシー運転手さんが多かったから、運転手さんの要望であれ作ってくれ、これ作ってくれてことで、7種類くらいまで増えてったの。お客さんの7割から8割は、カレーうどん頼まはるけどね。」

運転手さん達や常連さん達の要望でメニューはどんどん増えていき、現在ではうどんと丼ぶりを合わせても約40種類のメニューがあります。

日の出うどんの味はどこか懐かしく、日なたにいる時のようなじんわりとあたたかくて優しい味をしています。

肉カレーうどんと、わかめカレーうどん。日の出うどんのカレーうどんは、出汁に徳島産の宗田鰹節と天真醤油、15種類のスパイスにラードや小麦粉をブレンドした自家製ルーを溶き、片栗粉でとろみをつけたスープ。辛さも普通、中辛、辛口と味が選べ、うどんから中華麺や蕎麦に変更も可能。

わかめカレーうどんは、大隅さんの代でわかめとカレーが絶妙に合うことを発見し、メニューに加えたそう。

タクシーの運転手さんが多いせいか、お客さんには修学旅行で来られる学生さんや海外から来られる旅行者の方も多くいらっしゃるという。


京都の匂い

日の出うどんは、うどん屋さんとしてお店を始めて62年になります。

「やっぱり味は大事にしている。でも、何代も続いてるけど、おんなじじゃないと思うんですよ。多少は聞いてるけれど、そういうなレシピは無いからね。僕らの時代は見て覚えるやから。先代からあれこれ分量とか教えてもうてない。その代の味にちょっとずつ変わっていく。」

3代目の大隅さんは、20年間IT系の会社に勤められ、先代の跡を継ぎ、その後30年店主としてお勤めになられました。今は大隅さんの奥様、そして息子さんが4代目としてお店を守っておられます。

「僕らも歳いってきて、後々引き継いで行こう思っているけどどこのお商売でも材料屋さんがもうみんな辞めてるところが多いねん。みんな後継ぎがないから。そんななってきてるけど、うちはカレーうどんで一応残っているんやから子ども、孫、ひ孫にまで代々引き継げるようにしていきたいね。」

京都で生まれ、京都で育ってきた大隅さんは、

「京都は、やっぱり京都やね。京都は木の匂いがするんや。だいぶ整備されてきたけどまだまだ伝統的なものが残ってるしね。何年続くか分からないけどずっと続いてる。こんな商売なんかもそうでしょ。」

と、私たちに教えてくださいました。

ずっと続いていく京都のように、日の出うどんは人から人へ、これからも京都に残り続けて欲しいうどん屋さんです。


京都のスープ
#15
日の出うどん

文・写真:
鈴木日奈恵(基礎美術コース)

アシスタント:
鈴木はな佳(ファッションデザインコース)

京都のスープ
#15


日の出うどん

「どこのお商売でも材料屋さんがもうみんな辞めてるところが多いねん。みんな後継ぎがないから。そんななってきてるけど、うちはカレーうどんで一応残っているんやから子供、孫、ひ孫に代々引き継げるようにしていきたいね。」
家族でお店を守り続ける日の出うどん 3代目、大隅大二郎さんにお話を伺いました。