柚味噌専門
姉小路東洞院に”柚味噌”専門店の八百三があります。
創業は、1727年。元々は野菜、果物、乾物の商いをされていたそうです。そこからすぐ後に初代 八幡屋 三四郎(やわたや さんしろう)さんは精進料理を始められました。八百三の名前の由来もそこからきています。
「精進料理をやってる時代が長かったですね。昭和3年の昭和天皇の御大典(皇位を継承したことを国内外に示す皇室儀礼)のお料理に参加したのがさいごで以後、柚味噌専門になりました。」
京ことば “ゆうみそ”
看板にもある、“柚味噌”は、“ゆずみそ”ではなく“ゆうみそ”と読みます。これは京都の中でも八百三のある中京区のあたりだけです。柚子は京都の古くから知られる柚子の産地、水尾の柚子を使用されています。
「今のような物流のなかった時代ですから、地産地消で京都の白味噌と水尾の柚を使い、それが地元の人の知る所となりました。」
白味噌ベースのほんのり甘い柚味噌はおかずみそなので季節のお野菜や生麩、田楽や温かいご飯ごはんなどに合うのはもちろん、「パンとかクラッカーにクリームチーズと柚味噌をちょっとのせるとワインと合うんです」と教えてくださいました。
柚子の形の可愛い陶器
一番小さい60gは、お客様の声で4年ほど前に1年限定で復活したのがすごく人気で最近、定番にしたのだそう。また、可愛らしい柚子の形をした陶器の入れ物は本店でしか買えません。大中小の3種類あり、もう一度本店へ持っていくと、詰め直してもらえます。
「ある時、陶器一つ割れたから金継ぎをして器を持ってきてくださったことがあってすごく嬉しくて素晴らしいなぁって思いましたね。」
北大路 魯山人の看板
店内に飾られている看板は、芸術家の北大路魯山人が書いたもので、表に出ている看板は、その写しなのだそう。魯山人がまだ無名だった頃、地域の有力者の方のお顔つなぎで作ってもらったそうです。
素材の声、お客様の声
「大切にしていることは、“素材の声”と“お客様の声”です。素材の声って言ったらおかしいですけど、年によって柚の実りが違ったりするので、ただ新しいのを入れればいいっていうことではないのです。常連さんでも日々こられるけど毎日違うし、外国の方やったらそれが最初で最後かもしれないし、良い思い出になってほしいなぁ、できれば長くお付き合いが続くといいなぁと思っています。」
と修子さんは話してくださいました。
“一期一会”の場所
最後に、京都はどんな場所ですか。と伺うと、
「最初はやっぱり、こういう家に生まれたらしんどいな。と思う部分もあったのですが、やっぱり特別ですね。歴史があって、文化があって、食があって。自分がどこかに行ってその土地を楽しみにワクワクするのと同じように、京都に期待されて来られる方が多いので、日々の商いですが、お客様にとっても自分(店)にとっても一期一会、それが大切ですね。」
八百三は、今年で創業293年。上品で丁寧な修子さんの立ち振る舞いは、“老舗”という言葉に相応しい、覚悟が見えるようでした。
「どの様な形で継承するのか、模索しながら続けていきたい」と笑顔で話してくださった修子さんは、とても格好良かったです。
京都のスープ
#18
八百三
文:
鈴木はな佳(ファッションデザインコース)
写真:
鈴木日奈恵(基礎美術コース)
八百三 HP:
https://www.yaosan-yuumiso.com/
八百三 9代目 中村 修子(のぶこ)さんにお話を伺いました。