気づけば店長になっていた

京都の八坂神社のすぐく近くに祇園喫茶カトレヤはあります。
祇園喫茶カトレヤは1944年の創業から八坂神社の近くで約50年も愛されてきた喫茶店ですが、開業されたのは現在とは違った場所だったそうです。

店名に使われている「カトレヤ」は中南米を原産とする花の名前です。洋ランの女王、花の女王とも言われており、そのいわれから「気品」を連想させます。また、コーヒー豆とも関係が深いコスタリカ・コロンビア・ブラジルとフィジーの国花でもあり、喫茶店に相応しいことから名付けられたそう。

店内にはお花がたくさん生けてあり、居心地にいい静かさでとても落ち着く空間です。

現在の3代目オーナーと大学時代からの友人であった高橋さん。以前はジュエリー会社のデザイナーを生業とし、 お客さんとしてカトレヤに。フリーデザイナーとなった10年ほど前からカトレヤを手伝うようになり、気づけば店長になっていたそうです。

「10年前ぐらいはインバウンドの前なんで、ほんまにゆっくりしてて。喫茶店のことも考えながら、半分はジュエリーのデザインとか、アクセサリーのデザインの仕事の方もしながらやっていました。ただ、インバウンドで一気に忙しくなって、ちょっと片手間では、どっちもあかんなって。中途半端やったらお客さんに失礼やなあって思い始めました。もっと真面目に珈琲に向き合わないとあかんなと思って、こちらに専念しました。」

八坂さんと同じお水

喫茶カトレヤでは、八坂神社と同じ水脈のご神水を使っておられます。

「みなさん八坂さんに汲みに行ってはるんですか？って言わはるんですけど、この周りでは汲みに行ってはる所も多いんですが、うちは八坂神社に汲みに行っているのではなく、同じ水脈の地下水を店内の井戸から厨房に引いてさらに浄水して使用しています。

京都のお水って、僕の感覚もあるんですけど、軟水で柔らかいので、深煎りの豆とかを淹れた時でも、パンチはありつつも、口当たり柔らかいっていうか。逆にいうとちょっと下手な淹れ方したら、もうめちゃくちゃ頼りない味になったりするんです。あと、単にコーヒー豆の量を増やしたら良いってことではなくて、温度とか蒸らしのことであったりとか、コーヒーを淹れるときはすごく気をつけてますね。」

喫茶店と煙草

祇園喫茶カトレヤは、全面喫煙可ですが、2020年4月には改正健康増進法の全面施行が実施され、20歳未満の入店ができません。喫茶店と煙草の文化を守るためにこの決断をされました。

「喫煙について一段厳しくなった時があったじゃないですか。その時に、禁煙にしようかってオーナーに言われたんですけど、禁煙にしたら、カトレヤのお客さん全員変わることになるんやでって。常連さんもいるしね。」

高橋さんは、普段は煙草を吸われないですが、煙草を吸ってる人はどういう風にカトレヤのコーヒーの味を感じているのか、煙草を吸ってる時と吸ってない時の味の飲み比べをされたそうです。

「やっぱり、美味しいって言ってもえたり、ありがとうとか、カトレヤあってよかった。煙草が吸えてよかったって言ってくださるだけでも、僕は良いんですけどね。ほんまに、一番嬉しかったのは、煙草を吸うつもりだけに入って珈琲頼んだら美味しかったから、リピートしてるっていうお客さんがいてて。それ聞いた時はほんまに嬉しかったですね。」

頂いたコーヒーは香りが良く、ほどよい苦味ですっきりと飲みやすかったです。

喫茶店という文化

最後に京都にとってどんな存在でありたいですか？ とお尋ねしました。

「やっぱりタイムスリップじゃないですけど、ここに来たらいつも同じ空間っていうか、ほっこり出来る1日になる空間かなあ。珈琲も煙草も、やっぱり文化かなって思っていて。両方とも海外から来てるもんですけど、それなりに日本に馴染んで、バランス取れてるんかなって思います。デザイナーしてた時も、会議室で決まる事よりも喫煙室で決まってることの方が多かったですし。うちでも商談とかしてはる人とかも時々いはります。

そういう空間って大事なんかなあ。やっぱり他の喫茶店さんも、珈琲にすごい力入れてはると思うんですけど、うちも入れてないっていうわけではないんですが、どっちかって言ったら喫茶店っていう空間を大事にする方に重きを置いてる感じもしますね。」

喫茶店という文化とその空間を愛するお客さんを守っておられる祇園喫茶カトレヤさん。
コーヒーとお花と煙草。今日も喫茶店の心地の良い空気が流れています。

京都のスープ
#24
祇園喫茶カトレヤ

文・写真：
鈴木はな佳（ファッションデザインコース）
安彦美里（基礎美術コース）

祇園喫茶カトレヤ blog：
https://ameblo.jp/cattleya-gion