つくるひと、つかうひと
#10


金網|小桧山聡子さん

今日までありつづける工芸品は、そのものの形の美しさや用途だけではなく、守り続けられる技術や思いなど、目には見えない背景も含みながら「つくり手」によって受け継がれています。
そして、「つかい手」として工芸品を生活に取り入れ、使い続けることもまた、伝統をつないでゆくことと言えるかもしれません。
今回お話を伺ったのは、山フーズ 小桧山聡子さんです。食を通して、工芸品にどのようにアプローチしたのか。小桧山さんの"工芸品のある暮らし"をお話いただきました。

山フーズ 小桧山聡子さん
山フーズ主宰。東京を拠点に「食とそのまわり」にあるもの、こと、感覚などを研究、創作しさまざまな形で提供。ケータリングや食を用いた撮影、ワークショップ、講演会、執筆活動から商品開発まで、幅広くご活躍されています。「おいしいってなんだろう」「食べるってなんだろう」ということを日々考えているそうです。
京都にたった二人の水引職人として今も伝統を守り続ける。


憧れの「辻和金網」

──「金網のつりかご」について使用前のイメージやご存じの知識などはどんなものがありましたか?

辻和金網さんの焼き網はまわりでも人気なので知っていました。が、私は何度も買おうとしつつもタイミングを逃し、未だ安い金網を使っていて、憧れの「辻和金網」として認識していました。茶漉しや、湯豆腐杓子は実家で使っていて、網目の美しさや使うほどに変化していく様は体感として知っていて、いいなぁと思いながら使っていました。今回のつりかごなど、こんなに多様なラインナップがあることは、ホームページを拝見して初めて知りました。


包容力抜群のつりかご

──今回は、小桧山さんの生活にどのように取り入れたり、使用しましたか?
また、そのように取り入れた経緯なども教えてください。

自分のキッチンアトリエで使用してみたのですが、普段からいろいろなものを吊るしてあるので、引っ掛けられるところは無数にあり、こっちにあっちに様々入れて試してみました。かご状のものは、通気性の良さ、中身が見える、丈夫といった利点があり、非常に使い勝手がいいので大好きなのですが、まずは普通ににんにくやレモンなどを入れてみました。

吊るしてももちろんいいのですが、吊るさなくても見栄えがいい。そして取っ手の形が絶妙に気持ちよく、畳んでも開いても様になる。うーん、これはいいぞ!と次はさらしやお手拭きなどの布類を入れてみました。これもまた清潔感があっていいし便利。

──レモンも布類も、良い感じに馴染んでいてオシャレですね。

でしょう? お次は通気性の良さを生かして、洗って拭いた後のグラスや、木製のカラトリーを入れてみました。木製のものは普段から、拭いてからざるなどに入れて完全に乾くまで置いておくのですが、こうやって吊るしてあると収まりもよく、気分もいいですね。グラス類は、キッチンに超強力マグネットフックがあったので、それでがっちりと固定して吊るしました。重いものは強力なマグネットでないと危険です。

つりかごのなんでも受け入れてくれる包容力にうっとりし始めた時、ハーブを生けた花瓶が目に止まりました。ローズマリーやミントなど、料理に使うハーブを育てているのですが、彩と香りを楽しむためにキッチンによく飾っています。これをつりかごに入れてみると、繊細な手編みの網目と緑が良く合って、驚くほど素敵でした。

いそいそと陽の当たる場所へ移動。すると網目がさらに美しく際立ち、しばし見惚れてしまいました。この美しさは手編み故ですね。影さえも美しい。そうしてもう一度、何も入れずに網目をじっくり眺めながら愛でました。裏返して置いておくだけでも美しいですね。

中に灯りを入れたりしたら影がまた綺麗かもしれない。などと妄想しながら、工芸品は使って心地よい美があるだけでなく、そこに置いてあるだけでも、その存在自体が美しいのだなと改めて思いました。


心動かす工芸品

──実際に金網のつりかごを使用してみて、気づいたことや感想を教えてください。

実は同じような金属のつりかごをキッチンでも以前から使っていました。しかし、それには雑多なものを適当に詰めて吊るしており、今回のように、わくわくしながら色々なものを入れたり出したりするようなことはしたことがありませんでした。改めて、そのものが持つ力のようなものを感じました。

想いのあるものに触れていると、こちらの行動も心も動かされます。それがここにあるかないか。存在が何かを変えるのです。触れていて嬉しい、というのが工芸品の心地よさなんだろうなと思います。

──なるほど、そこにあるだけで行動や心に変化が生まれるのはすごいですね。
使う上で、もっと良くなりそうと思ったところや注意点はありますか?

足りていないところなどないのではないでしょうか。あえていえば、こういうものがあることを、選択肢の一つとして幅広く知られていけばいいなと思います。手に取りやすくする環境づくりというか。これから、経年変化を味わいながら使い続けることがとても楽しみです。

──さいごにあなた独自の視点で、この「金網のつりかご」に星をつけてください。

・使うよろこび:★★★★★
・使いつづけるよろこび :★★★★★


職人さんの手の感覚を頼りに作りあげられる美しい六角形。
完全に均等ではないからこそ手仕事の暖かい風合いがあります。

【辻和金網】つりかご

今日では伝統的な手編みの金網細工店は片手で数えるほどになる中、辻和金網さんは今も昔と変わらない作り方を続けておられます。
辻さんにお聞きしたつりかごのスタンダードな使い方は、根菜類、果物入れだそうです。室内で使うことはもちろん。外に持ち出して楽しんでいただけます。


つくるひと、つかうひと
#10
山フーズ
小桧山聡子

文:
則包怜音(油画コース)

山フーズ HP:
https://yamafoods.jp/

つくるひと、つかうひと
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金網|小桧山聡子さん

今日までありつづける工芸品は、そのものの形の美しさや用途だけではなく、守り続けられる技術や思いなど、目には見えない背景も含みながら「つくり手」によって受け継がれています。
そして、「つかい手」として工芸品を生活に取り入れ、使い続けることもまた、伝統をつないでゆくことと言えるかもしれません。
今回お話を伺ったのは、山フーズ 小桧山聡子さんです。食を通して、工芸品にどのようにアプローチしたのか。小桧山さんの"工芸品のある暮らし"をお話いただきました。