つくるひと、つかうひと
#13


錺金具|竹内直希さん

今日までありつづける工芸品は、そのものの形の美しさや用途だけではなく、守り続けられる技術や思いなど、目には見えない背景も含みながら「つくり手」によって受け継がれています。
そして、「つかい手」として工芸品を生活に取り入れ、使い続けることもまた、伝統をつないでゆくことと言えるかもしれません。
今回お話を伺ったのは、錺金具製造株式会社竹内 2代目 竹内直希さんです。

竹内直希さん
昭和43年(1968年)に釣灯籠のお店から始まった。この道50年以上のベテラン職人を抱え、手作業で鏨(たがね)を打つ。


目次:
大事に長く使う工夫
こだわりの道具
職人の技を身近に


大事に長く使う工夫

──京都で錺金具が発展したのは、やはり寺社仏閣が多いからでしょうか?

まあ、そうでしょう。何で京都なのかというと難しいですけど、京都の人は丁寧だからっていうのもあると思います。
例えば、古い物が修理とかで来るんですよ。そういう中には、物凄い手のこんだ物もあるんですね。そういう昔の人の仕事を見ると、「 あぁ、やっぱりすごいな。」 と、心を動かされることが多々ありますね。 今ではようやらんわ〜という感じの、そこまでやるか!?みたいな飾りもあるんです。本当に、かなわないですよね。

──一人前になるにはどれくらいかかるんですか?

そうですねー、俗にいう10年っていいますやんか? それくらいです。
10年修行して完璧な物が作れるかというとそういうわけでもないんですけど、10年もすれば日常的な金具を作れるようにはなります。芸術品としての美しさを求めるなら全然10年では足りないですよ。

──一人生かけて学んで、作っての繰り返しなんですね。


こだわりの道具

──道具はどのぐらい使っているんですか?

基本は、手入れしながら長いこと持たせますね。決まった年数はないです。
ほとんどの鏨は開業当初から使っているものなんですよ。使えば使うほどネジみたいに頭が潰れて丸くなったり、形を見るとどれだけ使ったか顕著に出ます。 ヘタってきた道具は自分たちで修正しながら使い込んでいきます。

──それぞれ職人の手に合った、馴染みのある道具なんですね。
1番古い道具、見たいです!

これとか、古いですよ。職人さんのお下がりでいただいた物なので、いつから使われてるんでしょうね。直し直しずっと使うんです。

──鏨って、何種類くらいあるものなんですか?

正確に把握しているわけではないですが、ざっと1000種類くらいだと思います。うちにある鏨は代々受け継がれている道具がほとんどです。 作る形に合わせて、その都度鏨職人さんにオーダーして作ってもらったりします。 簡単な調整だったら、自分たちでやすりで削ったりもします。大事に使ってますよ。

──道具も大切に、モノも大切にですね!


職人の技を身近に

──竹内さんでは錺金具のマネークリップを制作されているとお聞きしましたが、商品を作る際に、大変だった点や、こだわった点はありますか?

経年変化を楽しんでもらおうと思うと、作る時に、極力触らないとかの配慮をしないといけなかったですね。
研磨したあとパックするまでの間、触るとそこが変色しちゃうんです。なので手袋をして作業してました。 今まで、そんなことやったことなかったですね。笑
そこがこだわりというか、気を遣って作業しました。

──試作段階で苦労したことはなんですか?

いろんな、形を試して、挟む部分は悩みましたね。よくあるのは、バキッと折った形で挟む、マネークリップ何ですけど、それだと、せっかく模様入れてるのに、そこに折れ線が 入っちゃうんですよね。なので、模様を生かしつつ、ちゃんとマネークリップとして挟める 機能性も兼ね備えた形にするのに気を使って、作りました。

──商品に使う材料のこだわりはありますか?

マネークリップに使っているのは、燐青銅っていう素材を使用しています。 普通の銅よりも硬くて、バネ材によく使われるんです。 銅で同じのを作っても、フニャッとして出来ないし、真鍮でも出来ないことはないですけど 弱いです。やっぱり、ある程度の強度がいるんです。

0.8ミリで、厚みは揃えています。手ではなかなか硬くて加工しづらいので、手作業で柄を 入れたあと、機械で加工します。
こだわりとして、あるのは、手でベースは作るってことです。
もともと手彫りで作ったものを、金型に起こしたり。

──マネークリップの中で竹内さん一押しの模様はありますか?

僕は、さざなみの柄を使っています。凹凸があった方が経年変化がよくて、内側にも模様が ついていて、オシャレ。

──飾り細工の柄はそれぞれ意味があるのでしょうか?

そうですね。唐草模様だったら「繁栄」とか日本に昔からある柄が持つ意味ですね。祭具や仏具なので、おめでたいものとか祈りの意味のある柄が多いと思います。

──修理の依頼も受けていると聞きました。

マネークリップとかの場合は、緩んでくるんですよ。そういうのはすぐ締めれますので是非お持ちください。

──心強い!竹内さんが実際に使っているものはありますか?

はい、普段からマネークリップは使用しています。そうだな、見て欲しいところがあって、、、ちょっと待っててください。

(ここで、実際に使っているものを持ってきてくれる)

4ヶ月くらい使ったもの何ですけど、けっこう色が渋く落ち着いた感じに変わります。 この色は、酸性の液体とかで磨くと、新品に近い色に戻るんです。
この素材は使い込むことで味わいが出てきて、長く使えば使うほどその色や風合いの変化を楽しむことができるんです。

──日々大切に使う事で、その装飾技術の持つ重みがでてくるんですね。

大丈夫や。今箸置き作ってんねんけど、箸置きって洗わなあかんやん。だからどんなもんかなと思って、洗剤入れた水の中に24時間入れといたんやけど、柔らかくなったくらいで潰れへんかった。で、また拭き取ったら硬くなってくる。お手入れも楽やし、汗とかにも大丈夫や。汚れてもティッシュとか挟み込んだら大丈夫。意外と丈夫やろ?

──「水引」を使う上で知ってもらいたいことはありますか?

うーん、そやなあ、いろんな飾りをつくるにおいて、たくさんのパターンで、例えば祝儀袋にしろ、普通の工芸品にしろ、古来からある紐ということで水引から日本の伝統文化を知ってほしいね。結婚の時の結納にしろ、そういった伝統を、昔の人から伝わってきたものを残していくというのが一番大切なことちゃうかな。

色んな工芸品とか伝統産業を使っていくことで日本のためにもなるし、これからの京都のためにもなると思う。


つくるひと、つかうひと
#13
錺金具竹内
竹内直希

文:
箱石かなで(プロダクトデザインコース)

撮影:
中田挙太

錺金具竹内 HP:
https://www.kazaritakeuchi.com/

つくるひと、つかうひと
#13


錺金具|竹内直希さん

今日までありつづける工芸品は、そのものの形の美しさや用途だけではなく、守り続けられる技術や思いなど、目には見えない背景も含みながら「つくり手」によって受け継がれています。
そして、「つかい手」として工芸品を生活に取り入れ、使い続けることもまた、伝統をつないでゆくことと言えるかもしれません。
今回お話を伺ったのは、錺金具製造株式会社竹内 2代目 竹内直希さんです。