つくるひと、つかうひと
#05


藁|藤井桃子さん

今日までありつづける工芸品は、そのものの形の美しさや用途だけではなく、守り続けられる技術や思いなど、目には見えない背景も含みながら「つくり手」によって受け継がれています。
そして、「つかい手」として工芸品を生活に取り入れ、使い続けることもまた、伝統をつないでゆくことと言えるかもしれません。
今回お話を伺ったのは、地元「花背」で藁細工のブランド化を行い、藁の可能性を探る花背WARAの藤井桃子さんです。

花背WARA 藤井桃子さん
京都市立芸術大学在学中、4回生の頃に藁細工ブランド「花背WARA」を立ち上げる。
小中高と育ってきた花背の藁細工技術でなにかできないかと思い立ち、地元のおばあさまに藁細工を習い始めたことがきっかけ。かつての暮らしの必需品である藁細工をジュエリーに落とし込む他、祭具やオブジェ作品の制作など幅広く活動している。


目次:
花背WARA
機能性と造形美のかたまり
綺麗に使えば味がでる
使う人に馴染む


花背WARA

──花背WARAの特徴はなんですか?

古いものも大事にしてますけど、やっぱり造形的な美しさとか、固定概念に囚われずにジュエリーであったりとかアート作品とかいろんな可能性にも広げていこうと色々挑戦してます。一つに偏ってないというか幅広くできるっていうのが強みかなぁ。

──工芸品としての藁細工だけでなく、新しい分野も挑戦していってるんですね。しかも田んぼづくりから編むまで行っておられるんですよね?

そうですね。素材作りから始めていて、地元の花背のおばあさんに田んぼ借りてるんですけど、本当に最初の種から目切りっていう芽を出す苗づくりから始めています。ウチ中心やけど、親戚とか近所の方とか助手を受けながらやってるって感じですね。

青田刈り専用の田んぼと、最終の種をとる田んぼの2つ分けてて、青田刈りは神事とかで、熱田神宮などに使って、最終の藁は製品に使うよう分けてますね。神社で使うのはやっぱ青々と綺麗なのがいい。種は餅米なんでおもちとして食べたり、赤飯として食べたり。あとはタネに使ったりします。

──食べれるんだ!そうですよね、お米ですもんね。藁細工になるまではどのような工程があるのですか?

まず苅る、次に干す、一本一本選定して、藁を叩いて柔らかくして編む。って感じですかね。

全部大変ですけど、特に選定が時間かかります。藁には、はかまっていういらない下葉があるんです。これを手ですぐって、さらにいらないものをすぐって…… そういう工程を経て、使えるようになるって感じですね。

あと稲熱病っていうのが発生したりするんですよ。それのシミが付いてたりすると、見た目も悪いし強度も弱くなってしまうんで、もう一本ずつ見て丁寧にやってます。


機能性と造形美のかたまり

──藁細工の魅力はなんでしょうか?

やっぱり、温かみがあるとこですかね。工芸全般そうかもしれないけど、藁の素材って縄文時代からの稲作文化で日本人に一番身近やし。根本というか、精神性が内服されてる素晴らしい文化やなと思いますね。

造形技術もすごく良く考えられてるんです。なんでこういう造形が生まれたんやろっていうモノがよくありますね。機能性も伴ってるし、造形美もあって全てが美しいなって思いますね。

──藁細工文化は日本ならではですもんね。具体的に、どういう点が優れていると思いますか?

熱さに耐えられるし、手作りの味わいがありますよね。鍋敷きは飾っておいてもかわいいし鍋敷きのワークショップもよくするんですけど、リースとして飾ったりもできるしねぇ。

見た目も好きで、藁細工習い始めたんもそれがきっかけで、すごく好きだなぁ。見た目は結構ボリュームあって、存在感あるんですけど、割と軽いものが多くて、機能性も耐熱性、保温性に優れてるから、おひつ入れとか温度はそのまま湿気だけ出す。

藁って機能性があるものだからそれを上手くやっぱこういう風に細工して活用してるっていうのが、今は便利な世の中になってきて廃れてきてるけど、実は今の暮らしでも使えるしより愛着の持てるものがいっぱいあるんじゃないかな。


綺麗に使えば味がでる

──藤井さんは藁細工どんな風に使っていますか?

鍋敷き、毎日使っています。元は青みがかってたんですけど、何年になるやろ。3年くらいかな。綺麗に使えばやっぱ色の変化は綺麗ですね。鍋や置き物、置いたりするんですけどコゲがついてきたりして、飴色になってきます。いい味でてますよね。

あと、鍋敷きは頭に乗っけてモノを運ぶ時にも使えるし、壺のせたり、不安定なものも立てれます。


使う人に馴染む

──使用する上での注意点や、使ってほしい場面などはありますか?

湿気には弱いので、もしカビが発生した場合は、水を含んだ布でよく拭きとってから、払ってあげて乾燥させたり、水に濡らしてしまった場合はよく乾燥させたほうがいいかな。

使ってほしい時は…… やっぱり日常で使ってもらえると嬉しいですね。特別な日に、プレゼントでもウチはいいと思います。

──藁細工はどれくらいの間、使えますか?

ご自身にお任せします。壊れるまで(笑)

使ってると、その人に合わせて馴染んでくれるんで、最初はキツくかんじるやろうけど、使ううちにフィットしてより馴染んでくるから、大事に使ってあげてください。


手でつくられた温かみのある藁の鍋敷きは、どのお家にもなじみ、手作りだからこその存在感があります。

【花背WARA】鍋敷(まる・さんかく・しかく)

2013年より花背WARAの活動をスタートされた藤井桃子さんによる、「藁の鍋敷き」。
藤井さんは昔から作られている藁細工をご年配の方から習いながら制作活動をされています。
近年は藁細工の需要が薄れ、京都・花背地域でも作られる方は少なくなっています。


つくるひと、つかうひと
#05
花背WARA 藤井桃子

文:
箱石かなで(プロダクトデザインコース)

撮影:
神谷拓範(写真・映像コース)

花背WARA HP:
http://hanasewara.com/

花背WARA Facebook:
https://www.facebook.com/hanasewara/

花背WARA Instagram:
@hanasewara

つくるひと、つかうひと
#05


藁|藤井桃子さん

今日までありつづける工芸品は、そのものの形の美しさや用途だけではなく、守り続けられる技術や思いなど、目には見えない背景も含みながら「つくり手」によって受け継がれています。
そして、「つかい手」として工芸品を生活に取り入れ、使い続けることもまた、伝統をつないでゆくことと言えるかもしれません。
今回お話を伺ったのは、地元「花背」で藁細工のブランド化を行い、藁の可能性を探る花背WARAの藤井桃子さんです。