京都のスープ
#06


出町ふたば

「京都にとっては、私たちはまだまだ子どもという感じです。」
古いものに敬意を払い、新しいものを受け止めてきた京都で常に多くの人々から求められる出町ふたばさんのお菓子たち。
先代の想いを受け継ぐ、三代目の黒本愛子さんにお話を伺いました。

京都にとって、私たちはまだまだ子ども

「京都に来たら、ふたばさんの豆餅は欠かせない。」

もはやその行列は京都の観光地ともいわれているほど、多くの人々が訪れる出町ふたばさん。

老若男女、観光客の方や地元の方まで、多くの方が出町ふたばさんに並ばれます。

初代である黒本三次郎さんがその昔、自分のところのお米を使った餅菓子を作りたいとお店を出したことから始まったそうです。

その餅菓子というのが、「名代 豆餅」です。

三次郎さんは、ご親戚がいらっしゃった四条の「ふたば総本舗」さん(現在は無くなっています)へ行きましたが、そこは餅菓子ではなかったそうで、その後独立され、そこからお名前をいただき「出町ふたば」を出されたそうです。

「京都というのは古い街ですよね。応仁の乱があったり、明治維新があったり。私たちは明治からですので、京都にとってはまだまだ子どもという感じです。」

↑ 家紋である「双葉葵」の紋


小豆は変わるけど、味は変えてはいけない。

お菓子を作る上で、出町ふたばさんは素材にとてもこだわっておられます。
あんこを作り続けて10年というあんこ職人の藤森周治さんに話を聞きました。

「いちばん難しいのは小豆の見極め。同じ小豆でも、秋に炊き始めた時と、冬を迎えてから炊いた小豆でも変わってくる。それを見極めるのが難しい。でも、それを1年間同じ味にしていくのが僕たちの役目やな。小豆は変わっていくけど、味は変えたらあかん。昔のが良かったって言われたら、僕らは終わりやしな。」

出町ふたばさんのお菓子に使用される小豆は、十勝産の選りすぐりの小豆を使い、お水は、京都の井戸水を使用しておられます。

京都の地下には、琵琶湖に匹敵するほどの地下水が眠っていると言われており、その井戸水は、藤森さんも「京都の水はおいしいで」とのお墨付きです。

あんこは材料と水が決めて。出町ふたばさんの美味しいあんこには、おいしい小豆とおいしい水が使われています。

藤森さんは、「うちのとこのあんこはおいしいやろ」と、あんこを我が子のようにお話しして下さいました。


“変化”ではなく“進化”

京都は都が1200年も続いた歴史を持つ古い街でもありますが、日本初の路面電車が走ったり、日本初の小学校ができたりと、新しいものを受け入れる街でもあります。

昔から変わらない製法でお菓子を作り続けている出町ふたばさんですが、味も、素材も、常に“進化”はし続けなければいけないとおっしゃいます。

「京都は新しいもん好きですよね。古いものを大事にしながら、何も変わってないよーって新しいものを取り入れる。古いものを大事にしていないと、新しいものに臨めないですよね。捨ててしまったらダメですもんね。」

伝統を守りつつも、時代に合わせて少しずつ進化させていく。

小さい頃にふたばさんのお菓子を食べ、大人になっても買いに来るという方も少なくないそうです。

急激に変化するのではなく、少しずつ進化してきたからこそ多くの人々の生活に馴染み、長く親しまれているのかもしれません。


京都のスープ
#06
出町ふたば

文:
鈴木日奈恵(基礎美術コース)

写真:
竹之内春花(空間デザインコース)

京都のスープ
#06


出町ふたば

「京都にとっては、私たちはまだまだ子どもという感じです。」
古いものに敬意を払い、新しいものを受け止めてきた京都で常に多くの人々から求められる出町ふたばさんのお菓子たち。
先代の想いを受け継ぐ、三代目の黒本愛子さんにお話を伺いました。