つくるひと、つかうひと
#03


藁|酒井洋輔さん

今日までありつづける工芸品は、そのものの形の美しさや用途だけではなく、守り続けられる技術や思いなど、目には見えない背景も含みながら「つくり手」によって受け継がれています。
そして、「つかい手」として工芸品を生活に取り入れ、使い続けることもまた、伝統をつないでゆくことと言えるかもしれません。
今回お話を伺ったのは、デザイナーの酒井洋輔さん。日頃から伝統工芸に携わり、伝統文化の保全とイノベーションを行なっている酒井さんの“工芸品のある暮らし”をお話いただきました。

酒井洋輔さん
石川県金沢市出身。大学卒業後、いろは出版(株)にて、 雑貨ブランド AIUEO を立ち上げ、ブックデザイン・広告・ジャケットデザインなどを多岐 にわたって制作。
現在、京都芸術大学・空間デザイン学科及び、大学院文化創生領域、准教授。伝統文化イノベーション研究センターのセンター長も兼任。 好きな食べ物は、生ハムと蕎麦。その他、発酵食品(納豆、チーズ、鮒寿司)も。 好きな言葉は、ベルリンのコーヒー屋の入り口に書いてあった「Don’t die Before trying.」。


──藁の鍋敷へのイメージやご存知の知識などはどんなものがありましたか?

藁に関しての知識や歴史は知っています。
昔々、私たち日本人の多くは農家であり、お米をつくって収穫後の冬、そこで得た藁を素材 として、家の中で様々なものを作っていました。 例えばブーツ、蓑、傘、草鞋などのファッション用品から屋根やカーペットなどの建築用品 に至るまで、スケールも自由自在。

生活のほとんどの場面に藁は根付いていました。 そのため藁は、日本人の生活に昔から寄り添ってきた素材といえます。しかもそれらは、古くなったり必要なくなった時には、自然に還して循環させることができる。

──今回は、酒井さんの暮らしにどのように取り入れたり、使用したりしましたか? また、その使用方法に至った経緯や、背景を教えてください。

最近は京都も冬真っ盛りになって、とても冷え込みます。
なので、鍋を作って食べました。その際に使用しました。うってつけです。
鍋敷だから、その通りに使用しました。
他の使用方法は、今のところ思いつきません。

──普段の鍋敷と比べて、藁に変えた違いはありましたか?

そうですね。この藁製のものに変えて、食卓のテーブルの雰囲気はより良くなったと感じます。簡単にいうと、「藁の鍋敷使ってんねんで〜、オシャレやろ〜」と使う度に思ってしまうというか。満足感が増しますね。自分の生活がおしゃれによりよくなっているというのを肌で感じられます。

──藁の鍋敷を使用して、気づいたことや感想を教えてください。

鍋は毎日食べるってものではないですよね? それも季節でいうと、冬からが本番といった感じですし。なので使わない時に、どこにどういう風に置いておくかがポイントである気がしました。

形も美しいですし、見た目も「天然」なのでキッチンの収納の奥にしまっておくというのはもったいないと思います。

要するに、飾ってもいいわけです。
しめ縄ではありませんが、素材はしめ縄と同様の藁ですから。
例えば、壁にフックがあったりすれば、そこにかけておく。それだけで、部屋の雰囲気がガラッと変わりますよね。鍋敷から、こう、いいオーラが出てくるんですよ!

──この工芸品に足りないものや、使用する上での注意点はありますか?

足りないものなどあるわけがありません! 足るを知るためにこのようなものを使うのです。
今は、藁の他にもいろいろと便利な素材があります。だけど、これ以上に何を求めるんですか!?

素朴 純粋 用の美であります!!

オシャレなフックをつけて販売することで、壁などにかけて使用する粋な方が増えることが期待できますが、そんなアイデアは蛇足だろうなと思います。

──さいごに、酒井さん独自の視点でこの「藁の鍋敷」に星をつけてください。

この製品を使うと自分のことが好きになる ★★★★★


手でつくられた温かみのある藁の鍋敷きは、どのお家にもなじみ、手作りだからこその存在感があります。

【花背WARA】鍋敷(まる・さんかく・しかく)

2013年より花背WARAの活動をスタートされた藤井桃子さんによる、「藁の鍋敷き」。
藤井さんは昔から作られている藁細工をご年配の方から習いながら制作活動をされています。
近年は藁細工の需要が薄れ、京都・花背地域でも作られる方は少なくなっています。


つくるひと、つかうひと
#03
デザイナー 酒井洋輔

文:
則包玲音(油画コース)

つくるひと、つかうひと
#03


藁|酒井洋輔さん

今日までありつづける工芸品は、そのものの形の美しさや用途だけではなく、守り続けられる技術や思いなど、目には見えない背景も含みながら「つくり手」によって受け継がれています。
そして、「つかい手」として工芸品を生活に取り入れ、使い続けることもまた、伝統をつないでゆくことと言えるかもしれません。
今回お話を伺ったのは、デザイナーの酒井洋輔さん。日頃から伝統工芸に携わり、伝統文化の保全とイノベーションを行なっている酒井さんの“工芸品のある暮らし”をお話いただきました。